『早春晴朗』で欒念を演じた井柏然(ジン・ボーラン)。
このドラマを見て、「井柏然ってこんなに大人の色気がある俳優だったんだ」と改めて気づいた人も多かったのではないでしょうか。
私も今回、かなり印象が変わりました。私の中での井柏然は、映画「等風来」のイメージで、ドラマ「君子盟」も見ましたが、やはり「等風来」のイメージが強かったんですよね。

なので今回のドラマは、こういうクールな大人の男性を演じられるようになったんだなぁ、としみじみ感じながら楽しく観ました。
そんな井柏然が2026年9月9日に公開されたインタビューで、『早春晴朗』についてかなり詳しく語っています。
なぜ「覇道総裁」を演じなかったのか。
欒念を演じるうえで、何を一番恐れていたのか。
なぜ自ら20以上の一流ブランドに声をかけ、衣装のスタイリングまで担当したのか。
そして、尚之桃を好きになっていく欒念の変化を、実は「シャツのボタン」でも表現していたこと。
井柏然本人の言葉を中心に、インタビューの内容を紹介します。
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「撮影中、考えていたのは一つ。油膩にならないこと」
まず井柏然が『早春晴朗』の撮影で最も意識していたこと。
意外にもそれは、「カッコよく演じること」ではありませんでした。
井柏然はかなりはっきり話しています。
「率直に言うと、撮影期間を通して僕が考えていたのは一つだけです。油膩にならないこと」
中国語の「油膩」は直訳すると「脂っこい」。
男性に対して使われる場合には、キザすぎる、自分に酔っている、色気を出そうとしすぎてクドい、といったニュアンスがあります。
まさに恋愛ドラマのエリート上司役が陥りやすいところです。
だから撮影現場では、監督とも何度も確認していたそう。
「これ、油膩じゃないよね?」
「大丈夫だよね?」
そんなふうに、お互いに確認しながら撮影していたと話しています。
欒念は立場だけを見れば、会社で権力を持つ「上位」の人間。
でも井柏然自身は、撮影現場ではむしろ自分も監督もできるだけ低い姿勢で考えたといいます。
視聴者、とくに女性が見たときに「気持ち悪い」と感じないこと。
そこをかなり意識していたようです。

「覇道総裁は絶対に演じたくなかった」
そして、欒念というキャラクターをどう作ったのか。
ここでも井柏然は明確でした。
「最初から言っていました。僕は絶対に“霸総”を演じたくない、と」
霸総とは、中国ドラマでおなじみの「覇道総裁」。
お金も地位も能力もあって、強引で俺様。
そんな完璧なエリート男性です。
でも井柏然が欒念として演じたかったのは、そういう男性ではありませんでした。
「僕が演じたかったのは、普通の、欠点を持った、洗練された一人の男性です」
この言葉を聞くと、『早春晴朗』の欒念が妙にリアルだった理由が分かる気がします。
仕事はできる。
ファッションも洗練されている。
でも、人間として完璧ではない。
毒舌だし、恋愛では不器用だし、ときには尚之桃を傷つける。
視聴者から「渣男(クズ男)」と言われることについても、井柏然はそうした欠点を否定するのではなく、人間らしさの一部として捉えているようでした。
完璧な男性にするのではなく、「生きている人」にする。
それが欒念という人物を作るうえで大切だったようです。
「好きになることは、コントロールできない」
欒念という男性は、仕事ではとても合理的です。
井柏然は彼の職場での考え方について、
「問題を解決することに集中する。感情を仕事に持ち込まない」
という人物だと説明しています。
だから部下にも厳しい。
誰かを好きだから優しくする、嫌いだから厳しくする、というタイプではありません。
ところが、そんな欒念自身が職場で尚之桃を好きになってしまう。
しかも二人の関係は、長い間公にできない秘密の社内恋愛になります。
仕事では感情をコントロールする男が、自分の恋愛感情だけはコントロールできない。
井柏然が語った言葉が印象的です。
「好きという感情は、コントロールできない」
『早春晴朗』の欒念という人物を一言で表すなら、これなのかもしれません。

「今の年齢で恋愛ドラマに戻って、この役に出会えたのがちょうどよかった」
井柏然は若い頃、いわゆる偶像劇、つまり若者向けの恋愛ドラマを積極的に選んできた俳優ではありません。
当時は周囲から、
「どうして偶像劇をやらないの?」
「どうして逆に映画へ行って、脇役を演じているの?」
と言われることもあったそうです。
本人自身も、その選択について考えた時期があったと振り返っています。
それから映画をはじめ、さまざまな作品や役を経験してきました。
そして40歳を目前にして『早春晴朗』に出演。
「今の自分の年齢になって、改めて偶像劇を撮り、このような役に出会えた。僕はちょうどよかったと思っています」
若い頃ではなく、今だから欒念を演じられた。
井柏然自身も、そう感じているようです。
確かに欒念には、若さだけでは出しにくい雰囲気があります。
仕事をしてきた時間。
人との関係。
恋愛経験。
そして、それでも人間は完璧にはならないという感覚。
井柏然自身が年齢を重ねたからこそ、欒念という男性に説得力が生まれたのかもしれません。
「これまでのファッションリソースを、全部この役に注ぎ込みました」
そして話は、『早春晴朗』で大きな話題になった欒念のファッションへ。
中国では欒念について、
「北京で最も品格のある男」
「職場ファッションの天井」
といった声まで出ました。
実は、あのファッション。
井柏然本人がかなり深く関わっています。
「僕がやったことの一つは、これまで自分が持っていたファッションのリソースを、全部この役に注ぎ込むことでした」
井柏然は自身がこれまでファッション業界で築いてきたつながりを使い、多くの一流ブランドに協力を依頼。
その数は20ブランド以上。
さらに、
「今回、初めて自分自身のスタイリング指導も担当しました」
と明かしています。
単に衣装スタッフから渡された服を着ていたわけではなかったんですね。
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ランウェイを見ながら、井柏然自身が衣装を選んだ
ただし、トップブランドの服を集めれば終わり、という話でもありませんでした。
井柏然自身が各ブランドのランウェイをチェックし、その中から欒念に合う服を選んでいったそうです。
ところが実際にやってみると、これがかなり大変。
ランウェイに登場する服にはショー用にデザインされたものも多く、すべてが市販されるわけではありません。
さらに、どれだけカッコよくても「広告会社で働く欒念が日常的に着る服」として成立しなければ意味がない。
実際に着られるものを選び、ブランド側とスケジュールを合わせて取り寄せる。
井柏然はこの作業について、かなり苦労したと振り返っています。

あのピンクシャツには意味があった
井柏然が特に気に入っている衣装として挙げたのが、水槽のシーンで着ていたピンクのシャツ。
ここからの話が、かなり面白いです。
ドラマ序盤の欒念は、自分自身をきっちりコントロールしている男性。
だから衣装も、
スーツ。
ネクタイ。
閉じた襟元。
かなり整っています。
ところが尚之桃と出会ってから、そのバランスが少しずつ崩れていく。
「最初は感情を抑えているので、ネクタイを締めて、スーツを着て、ボタンもきちんと留めています」
でも、尚之桃への気持ちが強くなってくる。
すると、
「少しずつボタンを開けていく」
さらに服の色も変わります。
「色のあるものを着るようになる」
つまり欒念の衣装は、彼の恋愛感情と一緒に変化していたんです。
自分の気持ちを秘密にしているつもりなのに、もう隠しきれない。
井柏然は、その状態を衣装でも表現したかったようです。
外の世界に向かって、無意識に自分の気持ちを発信してしまっている。
そんな欒念の浮き立つ気持ちが、ピンクのシャツや開いたボタンに表れていたということ。
これは知ってからもう一度見たくなります。
「もうすぐ40歳。これから向き合うのは自分自身」
インタビューの後半では、欒念ではなく井柏然自身の話になります。
「僕はもうすぐ40歳になります」
そして、この年齢になって感じていることについて、
「これから僕が向き合っていかなければならないのは、自分自身なのだと思います」
と語っています。
若い頃には他人からの評価を気にしたり、自分に厳しくしたりすることも多かった。
でも今は、少しずつ肩の力が抜けてきたそうです。
自分を励ます。
自分を慰める。
自分自身を大切にする。
井柏然はSNSに書道で言葉を残すことがありますが、それも自分自身との向き合い方の一つなのだそう。
誰かに100%理解してもらうことを求めるのではなく、自分自身をちゃんと理解してあげる。
20年近く俳優を続けてきた今だからこその言葉なのかもしれません。

今の人生に点数をつけるなら「満点」
インタビュアーから、現在の人生に点数をつけるなら何点かと聞かれた井柏然。
答えは、
「満点」
でした。
完璧な人生だから満点、という意味ではないのでしょう。
欠点のある欒念を「生きている人間」として演じたように、自分自身についても、完璧ではない状態をそのまま受け入れられるようになった。
そんな今の井柏然だからこそ出てきた答えのように感じました。
母から言われた「餃子の包み方を覚えなさい」
最後に「最近、一番印象に残っている出来事は?」と聞かれた井柏然。
そこで出てきたのは、俳優の仕事でも、大きな賞でもありませんでした。
一昨年のお正月。
母親から、
「餃子の包み方を覚えなさい」
と言われたこと。
もうすぐ40歳。
仕事だけではなく、家庭や日々の生活について考える年齢になったということなのかもしれません。
華やかな芸能界で長く活動してきた井柏然が、最後に話したのがこんな普通の家庭の話だったのも、なんだか印象に残ります。
『早春晴朗』の欒念が魅力的だった理由
今回のインタビューを聞いて、『早春晴朗』で井柏然が妙によかった理由が少し分かった気がしました。
「カッコいい男を演じる」のではなく、
「油膩になりたくない」
「覇道総裁は演じたくない」
「欠点のある普通の男を演じたい」
と考えていた。
それなのに結果的には、「北京で最も品格のある男」「職場ファッションの最高峰」と言われるほどカッコいい男になってしまった。
そこが面白い。
そして衣装まで本人がここまで作り込んでいたことにも驚きました。
特に、
ボタンを閉めていた欒念が、尚之桃を好きになるにつれて一つずつ開いていく。
色のない服から、ピンクのシャツへ。
「好きという感情はコントロールできない」
その言葉を、演技だけではなく衣装でも表現していたんですね。
『早春晴朗』をもう一度見るなら、今度は井柏然の表情だけではなく、シャツの色とボタンにも注目して見てみたいと思います。
※本記事は2026年9月9日公開の井柏然へのインタビュー動画の内容をもとに、本人の発言の意味を損なわないよう日本語で整理・構成しています。
